2008年9月24日水曜日

[本]勝間式『御利益の方程式』とは?…勝間和代著「読書進化論―人はウェブで変わるのか。本はウェブに負けたのか」

読書進化論~人はウェブで変わるのか。本はウェブに負けたのか~ (小学館101新書)

少し前のことです。mixi の勝間和代コミュでこの本のキャンペーンがあると聞いて、さっそく申し込んでみました。すると版元の小学館から分厚い原稿が速達で届きました。この本の版型は新書判だったと思うのですが、良い紙で片面印刷なのでかなりの厚さになっています。ノンブルは254ページ。読書でこれだけ語れるのも、ベストセラーを連発した勝間さんならではでしょうか。
 というわけで、まずはこの本の目次をご紹介いたします。



【目次】(Amazon.co.jpより引用)

第一章 人を進化させる読書がある
ウェブ時代の本と書店の再定義/自分を進化させる本とのリアルな出合い方
読者が進化して著者になると、上場株(=パブリックな人材)になる
ウェブで発見され、約1年で150万部の売り上げに
再現性が高い本は読者に“ご利益”をもたらす

勝間式 書店ぶらぶら歩き(1) 「リブロ青山店」編

第二章 進化している「読む」技術
フレームワークがない読書は身につきにくい
本選び基準のひとつは「ウェブや友だちの話より質が高いかどうか」
良書との出会いが読書体験を豊かにする秘訣
自分の読書レベルに合った読み進め方がある
多読や速読など、「読む」技術について
「読んでおしまいにしない」が究極の技術

第三章 「書く」人も進化する
深い話を広く伝える手段として、本は最もリーズナブルな流通形態
文章力はブログやメールで進化させることができる
書店は宝の山。“本のコンシェルジュ”を活用するのも手
勝間式「相手がわかりやすく読みやすく書く」ための4つの技術
技術(1)「自分の事例」「アンソロジー形式」を利用して、親しみを持たせる
技術(2)「役に立つフレーズ」を必ず入れ、読書だけに体験を閉じない
技術(3)「共通体験」や「流通していることば」を使って行動を促す
技術(4)「コンテンツ力」と「編集力」で進化していく
ウェブで発見されて著者に進化するには

第四章「売る」仕組みを進化させる

出版業界は「プレイス」と「プロモーション」が弱い
好循環を生む基本的な仕組みは「まじめに作って、まじめに売る」
「著者ブランド」を最大限に活用する
リアル書店とネット書店の特徴を生かした「売る」仕組み作りを
ウェブの活用、チャネルの再考…まだある、出版社にできること

勝間式書店ぶらぶら歩き(2)「丸善丸の内本店」編

終章 これから「読みたい」「書きたい」「売りたい」と思っているみなさんへ
読書の進化形、印税寄付プログラム
すべての人にフェア(公平)な可能性を秘めている「読書」の世界

私を進化させた20人の著者
巻末資料
おわりに


以下、この本のプルーフ版(発売直前の版)を読んだ上での感想です。

 まず、勝間さんがこの本を書かれた意図とはなんでしょうか?それについて、この本で勝間さんは3つの事について述べられています。この本の「はじめに」によれば、
  1. ウェブによる本というコンテンツの読み方の進化
  2. ウェブによる著者と読者の関係性や書き方の進化
  3. ウェブによる本の売り方と書店の進化
ということを柱にこの「読書論」を構築されているようです。
 それを踏まえた上で、私がこの本で読んだことの感想も大きく分けて3つありました。それを勝間さんの前著「利益の方程式」にならって、「御利益の方程式」としてあらわすと、次のようになります。

1.【読んだことを実践できる=本の「御利益」】
2.【売れる本を書く「仕組み」を作る=「カツマー」を増殖させる=社会を変えていく】
3.【本を書く=自分メディアのフィードバックループに入れこむ=「世の中」をカイゼンする】

 では、具体的に各「方程式」としてあらわした感想を次に述べたいと思います。

1.【読んだことを実践できる=本の「御利益」】
 「勝間本」は、読む人にとって「厳しい本」です。なぜならば「読みっぱなし」にすることを許さないからです。勝間さんご自身はまさに「実践の人」というに相応しい人だと私は思いますが、この本は読者に対しても「本を読んだら、とにかく実践して自分で検証してみる」ことを良い意味で「強要」するのです。でも実際には「強要」などという強い言葉を使う必要は全くありません。
「あ、こういう良いことがあるんだ」
「なるほど、これをやってみるといいんだな」
「ほんとうだろうか?ちょっと試してみるか」
と自然に思ってしまう事例が満載だからです。
 しかし、思うだけでは勝間本の「利益の方程式」は成立しないことは確かです。この本も含め、勝間さんが打ち立てた「御利益(ごりやく)の方程式」の神髄は

読んだことを実践できる=本の「御利益」


にあるのだと思います。

2.【売れる本を書く「仕組み」を作る=「カツマー」を増殖させる=社会を変えていく】
 勝間さんは「仕組み作り」に長けた人だと私は思います。その仕組み作りはとどまることを知らず、勝間さんはこの本によって、私には「カツマー」と呼ばれる「勝間さんのファン=勝間さんのように実践する人たち」を増殖させようとする「カツマーの高速増殖炉」を作ろうとしているように見えます。
 勝間さんは読書を「社会を変革する」ためのツールとして、考えておられるようです。ある問題について考えるタネとして、読書がてっとり早いと考えていらっしゃる様子がこの本にも出てきます(たとえばp.17ページ)。本を上手に読める人が大勢出てくると言うことは、それだけ種々の「問題」について考えている人が増えると言うこと、情報を得たいと思う人が増えることです。バブル景気以降の社会の停滞感を「本を売る仕組み」を作ることによって、どうすれば「効率良く」勝間さんが考えることを伝えられるかということを、この仕組み作りによって、実験してフィードバックを得られようとしているのではないでしょうか。それはとりもなおさず、あたかも「読書」という人間の知恵の「核」になるものを、この「読書進化論」という本を「高速増殖炉」として用いてカツマーを増やし、社会問題について一石を投じようとする「仕組み」を作ることだと思うのです。

3.【本を書く=自分メディアのフィードバックループに入れこむ=「世の中」をカイゼンする】
 そして、多くの読者を作る以上に彼女が今後取り組んでいこうとしていることが、この本に書かれていると私は思います。それは「Chabo!」のような慈善・利益還元の取り組みです。そして、この運動を大きく動かす手っ取り早い方法が2つあることに私は気がつきました。文中では直接的には書かれていませんが、もちろん1つは、「Chabo!」本を購入する読者の母数を増やすこと。そして「Chabo!」本を書く「著者」の母数を増やし「Chabo!」のロゴを貼れる本をもっともっと増やすことです。
 もちろん、今でも有名な作家さん達の協力によって「Chabo!」は運営されているのですが、本というのはどうしても「好き嫌い」が分かれるのもです。そして本を沢山買ってもらわなければ、この「Chabo!」のような運動は広がりません。これを解決するにはいろんなタイプの「本を書く人」を増やすしかないと私は思います。そしてラッキーなことに、この本にはまさに「本を書く人」になった勝間さんのご経験が書かれていることも語られています。ある意味「著述業」商売の「ネタバレ」に近いことが行われているわけです。
 私はこの本の存在意義、ここまで勝間さんが情報を公開する意味を考えざるをえません。先に述べた、運動を拡張するために必要な「読者」以外のもう一つの存在である「著者」を増やすことは、単純な思考をすれば、もしかすると「ライバル」「商売敵」を増やすことになるかもしれません。でも勝間さんはそうは考えていないと私は思います。それだけ本気で「世の中をカイゼンする」ことを目指しているように思えてならないのです。そして、本気で考えるということは、勝間さんのいう「自分メディア」を作り、自分の考えを発信し、いろんな人々のいろんな考えを「自分メディア」にフィードバックすることに他ならないと思います。
 「本を書くことでステージがあがる」と、本文中でも勝間さんが先輩に勧められたことを述べられています。読者が進化して著者になることで得られる効果とは、社会に対しての発言力、影響力を増すことでしょうし、勝間さんもそのように文中で述べられています。
 母数が増えれば、量が質に変化する機会も増えようというものです。知恵が必要なところには本によって知恵を分配し、金銭が必要な所には本を売ることで金銭を分配できる仕組み作り、という一石二鳥のことをやってのけたのは凄いことだと思います。是非、どんどんと著者と読者の輪が広がっていって欲しいと思います。

 以上、3つの「御利益の方程式」が、この本のキモではないかなということで、感想を書いてみました。考えれば考えるほど上手くできた「進化する読書」という仕組み。プログラマがプログラムを組むときのような緻密さを感じるのは、きっと私だけではないように思います。一人でも多くの人がこの本を読み、停滞感がぬぐいきれない日本の社会を少しでも良い方向へ変えていくために、行動を起こせるよう願ってやみません。

読書進化論~人はウェブで変わるのか。本はウェブに負けたのか~ (小学館101新書)
 

2008年9月8日月曜日

モレスキンとマインドマップの「合わせ技」で読書メモ

私が愛読している Lifehacking.jp で、先日こんな記事がありました。

モレスキン + マインドマップの読書ノート | Lifehacking.jp
http://lifehacking.jp/2008/09/moleskine-mindmap-notetaking/


実は私もしばらく前から、モレスキンの小さい手帳でマインドマップを書いています。左の写真は、先日書いた杉村太郎さんの本をフォトリーディングしたのち、マインドマップにしたときのものです。このように、主にセミナーに参加したときのメモや、普段の覚え書き、そして読書ノートというか、読書メモなどですが、これが思ったより使い勝手がいいのです。すっかりハマってしまいました。GTD+R はそのまま続行中なのですが、メモを取るのは使い慣れたモレスキンの無地の小さい手帳です。システムとして何となく整理できてないというか、一元化できていないのですが、こうしておけばネタ帳としても使えます。

右の写真は、先日 NII で NetCommons のセミナーがあったときの分科会のメモです。私がこのシステムで描くときは、マインドマップのお作法に従って、横長の形で無地のモレスキンを使っています。面積が小さいので、ペンはステッドラーのトリプラス・ファインライナーまたはぺんてるのSlicciを使っていますが、これで十分用は足せていると思います。この点、mehoriさんとの違いがありますが、ほとんど同じ運用形態ですね。私の場合、見開きの左側(というか横長で使った場合の上側)は、インク写りがしたときに汚くなるのを避ける意味で空白にしていますが、ここは適宜資料を張ったり、メモを後から書き入れたりすることもあります。

マインドマップといえば、どの本を見ても「出来るだけ大きな無地の紙で」「できれば A4 以上、A3だったらとりあえずは十分」というような解説がどの本を読んでもされています。これはこれで良いんですよね。私も A3 のペラ紙を使うこともありますし、スケッチブックやマルマンのニーモシネ (Mnemosyne)にステッドラーのトリプラスで描いていたりします。実際、マインドマップを書き始めるとどんどん「枝」が伸びて行くので、大きい方が描きやすいのは確かです。マインドマップを始めたい人には、基本に忠実にという意味で、大きな無地の紙に書く事をお薦めします。

でも、大きいサイズは持ち運びにはちょっと辛い。A3だとちょっとした製図道具を持ち歩くのと同じサイズになってしまいますし、思いついたときにササッと描くということがなかなかむずかしい。スタバに入って空き時間に一人ブレインストーミングなどしているときは、小さい手帳の方が便利です。(大きい画材道具を広げていると注目を集めてしまい、ちょっと恥ずかしいというのもあります)

あと小さいノートに書く利点は、多くの事を書けないので簡潔に必要なことだけ書くようになるということと、描く面積が少ないので、時間をかけすぎずにマインドマップを作成できるということです。とくに、私はもともとお絵描きが好きなので、どうしてもマインドマップを書き始めると長時間それにかかりきりということが多くなってしまうのですが、小さいノートに読書メモをつけるようになってからは、無駄に時間をかけすぎることが少なくなってきたように思います。

左の写真はトニー・ブザン氏の The Mind Map Book を読んだときに「これは覚えておかなければ!」と思ったところを、いつも持ち歩いているモレスキンに描いたものです。 こんな風に、覚えておきたい事を描いておくということもしています。読書ノートというよりは、メモに近いのですが、体系的に読む本でなければ、こんな感じで描くのもフォトリー的にはありかなあと思っています。

works4Life の nomico さんもモレスキンを使っているそうですが、私も nomico さんと同じ理由でモレスキンの方がしっくりくるような気がします。これで後はどうやってデジタル的な検索性を上げるかが問題です (^^;

David Allen 氏が来日セミナーで、mehori さんと nomico さんとご一緒した際、mehori さんはモレスキンの罫線つき手帳に、nomicoさんは無地のノートをささっと出してマインドマップでメモをとっていらっしゃったのが印象的でした。そういえば、私もまねして、モレスキンにメモをとり、ブログのネタにさせていただきましたね (^^;

このモレスキン+ミニマインドマップ発展形?で、コレクトの無地のカード(C-531)に、資格試験用のキーワードと解説とマインドマップを{書|描}くということをしてみました。表にキーワードと解説、裏にそれをマインドマップにしてみたものを描いています。写真ではシステムアナリストの用語をカードにしてみた例を載せました。


今年は体力的に無理ということで、システムアナリストを受けるのは断念し、中小企業診断士と TOEIC にしぼることにしましたが、中小企業診断士や TOEIC などの資格受験ツールとしても活用できそうです。しかし、作るのは大変そうなので、時間との兼ね合いですね。重要事項にしぼって作れば役立つのではないかと思っています。


さて、モレスキンの利用で唯一困る事。それは、いつかはページに終わりが来るという事です。新しいモレスキン手帳に今までのメモを全部描いていたら、それは無駄ですよね。しかし、一方で持ち歩きたい情報もあるわけです。(そういうときのために、私の場合「読書メモ」を作っているということもあるので…)

なので、せっかく集めたメモを検索できるようにシステム化したいのですが、マインドマップが「図」であったり「絵」あったりすることに難しさがあり…でも、考え方をちょっと変えれば、なんとか検索できるようになると思います。この話は、また別の機会にでも。

p.s.
読書ノートといえば、「シントピック・リーディング」あるいは「シントピカル読書」の実践が現在のテーマです。これは、複数冊の関連した本を読み、著者に「折り合いをつけさせ」るように、自分の考えをまとめていく手法です。以前 Gadget Blog の方でも「本を読む本」の内容として紹介させていただきました。しかし、難しいのは、数式がでてくる様な本なんですよね。熱力学の本をシントピックリーディングをしているのですが難しいです。この辺は mehori さんのやり方に習って、一章づつ丁寧にマインドマップにするなり、メモを起こすなりして、丁寧に読み下して行くのが正解のようです。さすがにシントピック・リーディングは情報量が多いので、モレスキンで、というわけにはいきませんが、研究課題や論文のネタとして使うものは、ペラ紙ではなく、きちんとしたノートにしておいた方が良さそうだと感じています。